球場のN子

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全力のノート

 ここにA5のノートがある。適当にページをめくると、なんだか、やたらと力のこもった手書きの文字がところ狭しと並んでいる。文字の色は原色に近い濃い青が目立つけれど、黄色もある。赤もある。ピンクもある。統一感はまったくない。田舎者のクローゼットのようである。

 この得体の知れないノートは、わたしの日記である。ひたすらベイスターズについて綴った、わたしの変態日記である。批評、分析の類ではない。「佐野、毎日猛打賞賞受賞」だの「桑原の美技にざわめくハマスタと、ほにゃらら町(自宅所在地)の八畳の部屋」だのといった感想未満の稚拙な文章を、無印良品の方眼ノートに思う存分に書き散らかし、最後に、その日打点・得点を記録した選手の名前を添えて完成、おしまい。といったものである。これをわたしは約半年間遂行したのであった。

 すべての試合について書くことは無論できなかったし、連敗を喫した土日明けと、今年相性の悪かった広島とのカードの翌日はよくずるけた。逆に、全然負けなかった8月は、試合のない日もペンがとまらなかった。最後の最後は、よくわからないけれど、今年一軍で一打席以上立った野手と、一球以上投げた投手全員にメッセージを書いて、これにてシーズンを終了とした。

 読み返してみると、内容云々というよりは単純にその文字の量に驚愕した。よくこんなに書いたものだと思った。話したら数秒のひとつの事象に対して、わたしはなんやかやと書きすぎなのであった。現実の10倍は饒舌である。むっつりの性である。むっつりとは、口には出さずに頭でよく噛んで思考し、ふんふんしてしまう生き物なのである。

 これらはすべて年末には燃やす予定である。黒歴史になる前に即焼却、即抹消はわたしの世代にとっては常識である。最初から燃やすつもりではじめたから、自由にやれたのだと思う。

 つい先日、ファンクラブをシルバーステージで契約更改した。来年もベイスターズを全力で応援したいと思います。

 本当に本当に、ありがとうございました。