球場のN子

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遠征の行方(上)

 ここに記すのは、わたしの名古屋旅行もとい名古屋遠征の最中に起こった出来事と、その反省の備忘録である。それらすべての要因はわたしにあり、愛知県、中日ドラゴンズバンテリンドームに一切非はない。そこは力強く否定しておきたい。では、はじめよう。

 7月。久々の三連休の最終日の朝、わたしは東京を発った。行き先は名古屋。目的は、その日の夜に行われる予定の中日対横浜の試合を観戦することである。わたしは念願の名古屋初上陸に凡乳をどんどこと躍らせながら、新幹線に乗り込んだ。

 10時過ぎに名古屋に着いた。わたしは今夜泊まるホテルに荷物を預けたかった。

 迷宮・東京駅に比べたらやさしいはずの名古屋駅だけれど、わたしは幾度目の横浜駅ですら目的のパンをまともに買えんのだから、やはり当然道に迷った。ホテルのホームページには「太閤通口を出て云々」と書いてあるが、わたしは一向に「桜通口」あたりから抜け出せず、表示を見つけては見失い、やがてまた「桜通口」に戻ってきてしまうのを繰り返して、そして絶望した。頼みのグーグルマップも己を見失いぐるぐるしている、わたしたちはもうダメだった。

 ひっくり返ってタクシーに助けを求めた。タクシーは我々をものの数分で目的地まで送り届けてくれた。とっくに乗ればよかった。クーラーの効いた車内で、わたしは虚脱した。ホテルに荷物を預け、用をたすと少し回復した。

名古屋市市政資料館」から「文化のみち」を練り歩き、ホテルに戻ったのは15時過ぎだった。わたしは、ひとりになると箍が外れたようにべらべらとしゃべってしまう奇癖を、名古屋でも発揮していた。ご機嫌でベイスターズのスタメンを勝手に発表するなどしながら、どろどろに溶けた化粧をまず直そうとキャリーケースを開けると、ファンデーションが入っていなかった。終わった、と思った。大袈裟である。百歩譲って今日はよい、問題は明日だ。

 新しく買う他に選択肢はないので、それは試合前にどこかのマツキヨで買うことにしよう。気を取り直してヘアアイロンの電源を入れた。ヘアアイロンはあったので安心した。

 ビジターユニフォーム、キャップ、タオルは「I☆YOKOHAMA」と「絶対勝つぞ」の2枚を手荷物に加えて、しまっておいたチケットの日付を見る。ここで間違っていたらファンデーションどころの話ではないほどの絶望だけれど、そこはわたしもくどいくらいに確認してから買ったので、心配はなかった。よし準備万端である。

 16時、わたしは気合を入れてホテルを出発した。(下へつづく)